最近キャンピングカーの人気が高まっていますが、それに合わせるように市販のバンをDIYしたバンライフ仕様車も増えてきました。ここで気になるのがキャンピングカーとバンライフ仕様車は何が違うのか?ということ。
日本においては、キャンピングカーとバンライフ仕様車には明確な違いがあるんです。
今回はそんなキャンピングカーとバンライフ仕様車の違いについて、ご紹介していきたいと思います。
(※2021年6月の内容です)
そもそもキャンピングカーってどんな車なのでしょうか?
広い意味では「寝泊まりできる設備を備えた車」のことで、この分類であればDIYしたバンライフ仕様車もキャンピングカーと名乗っても問題ありません。しかし、多くのバンライファーは自身のDIYしたバンライフ仕様車を「キャンピングカー」とは呼んでいません。
実はこの「寝泊まりできる車=キャンピングカー」という定義とは別に、道路運送車両法が定める車の分類の中に「キャンピングカー」という分類が存在します。
キャンピングカー保有者やバンライファー、キャンピングカー購入を検討中の人たちにとって、キャンピングカーと言えばこの8ナンバーのキャンピングカーのことを言います。
そのためまるでキャンピングカーのようにDIYした車でもキャンピングカーとは名乗らず、キャンピングカー風とかバンライフ仕様・車中泊仕様なんて呼び方をしているんです。
8ナンバーのキャンピングカーは、道路運送車両法で特殊車両に分類されています。キャンピングカーという特殊な用途に使う車両として、調理設備や就寝設備の設置が義務付けられ、またその寸法なども細かく決められているんですね。
8ナンバーを取得してしまえば晴れてキャンピングカーを名乗ることができるのですが、キャンピングカーの構造要件に記載されている中で1点、DIYでは解決の難しい項目があります。それは調理スペースに人が立って調理をする空間として高さ1600mmのスペースが必要という点です。
市販のバンの中で最大サイズであるハイエースのハイルーフ車でも室内の高さは1565mm〜1635mm(タイプによって前後します)。1565mmでは8ナンバー登録ができないのはもちろん、一番大きな1635mmのタイプでも天井や床に断熱材を入れたり板張りにして厚みが出てしまうと、1600mmの確保は難しくなります。
ハイエースなどをベースにしたバンコンで8ナンバーのキャンピングカーもありますが、これらは屋根がポップアップしたり調理設備前の床を掘り炬燵のように一段下げるなどして、1600mmの高さを確保しています。専門のキャンピングカービルダーの仕事であり、個人がDIYで行うのはほぼ不可能。
もちろん1600mmをギリギリ満たすDIYで8ナンバーを取得しているバンライファーもいますが、基本的にはこの1600mmの壁に阻まれてバンライフ仕様のDIYバンとしてバンライフを楽しんでいます。
ここまで制度としての違いに注目してきましたが、次は実際に車両の違いについて見ていきましょう。例として、キャブコンタイプのキャンピングカーと最大サイズのハイエース(スーパーロング・ワイド・ハイルーフ)をバンライフ仕様にDIYした車両を仮定して比較してみます。
まず大きな違いは先ほども挙げた車内の高さです。8ナンバーが取得できるギリギリの1600mmの高さでも、小柄な女性が立てる程度の高さしかありません。対してキャンピングカーでは車内高2mを超える車種も多く、大抵の人であれば車内で直立して作業することが可能です。車の中で生活をするバンライファーにとって、これはかなり大きなポイントです。
日本で製造・販売されているキャンピングカーの多くは、海外のキャンピングカーと比べるとコンパクトな車種が多く、全長を比べるとハイエースのスーパーロングと同程度のものがほとんど。しかし居室部分の横幅は運転席部分からはみ出した形状をしており、その分居室スペースが広くなっています。
また一般的な車は天井に近くなる程すぼまっていく台形のような形をしているため、天井付近の面積は狭くなっています。その点、キャンピングカーの居室部分の壁はほぼ垂直のボックス形状なので、天井付近も面積が広く、荷物の収納などにもアドバンテージがあります。
もともと車はそれほど断熱機能が高くありません。その理由は、走行中はエアコンで車内温度が調節できるため、断熱機能の必要性がないからです。しかし、駐車した車内で長い時間を過ごすキャンピングカーやバンライフ仕様車では、断熱機能はかなり重要です。
バンライフ仕様車をDIYする際にも車体と内装の間に断熱材を詰め込みますが、断熱材用のスペースを多く取ればそのぶん車内は狭くなってしまいます。それに比べて、広い居室スペースを一から設計するキャブコンでは、居室部分の素材を断熱性を高くすることができるので、断熱材を豊富に詰め込むことができます。
基本的にキャンピングカーの方が断熱性・防音性ともに高くなっています。
キャンピングカーの装備として思い浮かべられる設備のひとつ、キッチン。構造要件として設置が義務付けられています。コンロやシンク、冷蔵庫や電子レンジまで揃っていて、ちょっとした調理なら問題ありません。
実はバンライフ仕様車でもDIYで豪華なキッチンを設置している車はたくさんあります。しかし車内スペースの問題で非常にコンパクトな収納式だったり、常設した場合は他のスペースが削られたりします。
気が向いた時にいつでも使える、常設のキッチン設備がキャンピングカーの特徴のひとつです。
キッチンと並んでキャンピングカーになくてはならないのが就寝スペース。こちらもキッチン設備と同様、構造要件として設置が義務付けられています。キャンピングカーでもバンライフ仕様車でも、ソファー部分を展開して就寝時にはベッドになる、というのをよく見かけます。
しかしキャンピングカーにはもう1か所、運転席の上にバンクベッドと呼ばれる就寝スペースがあります。キャンピングカーを外から見た時に運転席の上に迫り出している、リーゼントのような部分です。
バンクベッドが確保されている分、天井が低いですが広さは十分にあります。何よりも横になるたびにベッドを出すのはかなりの負担。
バンクベッドがあれば、いつでも好きな時に横になることができるので快適です。
キッチン・ベッドについでキャンピングカーの装備として思いつくのがトイレとシャワーです。しかし、これまで説明してきた設備と違って、トイレもシャワーもキャンピングカーの構造要件としては設置が義務付けられていません。
また、実際に日本で作られているキャンピングカーではシャワー付きは少なく、トイレも設置されていないことが多いです。これは、日本では公衆浴場や日帰り入浴施設、公衆トイレが数多くあるため必要性が低いことが理由だと考えられます。
キャンピングカーは停車中の電力を賄うために強力なバッテリーを搭載していたり、中には走行用とは別に専用のサブバッテリーシステムを搭載していたりもします。また外部のコンセントから電力を車内に引き込む仕組みもはじめから搭載されています。
バンライフ仕様車でも電気製品の利用のためにサブバッテリーシステムを組み込む人が増えてきましたが、スペースの問題もあり、やはりポータブル電源の方がまだまだ主流です。ポータブル電源自体の性能もかなりよくなってきていますが、サブバッテリーと比べると容量面などで劣っています。
▼ポータブル電源のおすすめやレビューは以下の記事もお読みください。
ここまで車内装備を中心にキャンピングカーとバンライフ仕様車の比較をしてきましたが、車内で過ごすことに特化した設計のキャンピングカーが、その性能の高さを見せつける結果となりました。
それでも、DIYのバンライフ仕様車が人気を集める理由は、
・価格の安さ
・運転のしやすさ
・愛着
などが挙げられます。
バンライフ仕様車の多くは中古車で数十万円の車をベースに、DIY費用を含めても100万円かければしっかりとしたものが作れます。またキャンピングカーに比べて車体重量が軽いので、燃費もよくなります。
キャンピングカーは立体駐車場に停められないことが多く、また平置きの駐車場でもスペースの狭いところだと停められないことがあります。
普段使いも考えているのであれば、市販のバンをベースにしたバンライフ仕様車が便利ではないか、というのが上記の比較をした筆者の意見ですが、旅のスタイルによっては「車から出なくても生活が完結すること」優先される場合はキャンピングカーがよいかもしれませんね。
旅の期間やスタイルによってどちらを選ぶかの優先度は変わります。
キャンピングカーの購入やバンライフ仕様車のDIYを検討されているかたは、こういった違いも考慮して、ご自身にぴったりの1台を探してみてくださいね。
※今回の記事で触れたキャンピングカーの構造要件について、詳しくはこちら。
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